江戸時代の初め、江戸の日常消費物資の多くは、経済の先進地域であった上方(かみがた)(関西地方)から、海路などで輸送される<下り物>(くだりもの)に依存していた。しかし、18世紀に入ると人口が増加し、旺盛な江戸の消費需要を満たすために江戸周辺で生産される<地廻り物>(じまわり)が流入するようになり、しだいに江戸と関東農村との間に独自の流通ネットワークが形成されることとなった。
とりわけ江戸周辺の村では、野菜・魚介・薪炭・雑穀などを商品として出荷し、少し離れた関東近国の村では織物・醸造品を利根川や江戸川の舟運によって江戸市場に送り込んだ。なかには木綿や醤油のように、下り物の質量を上回る地廻り物も登場して来るようになった。
江戸市場を中心とした活発な商品流通の展開は、生産加工技術や輸送機構の発達を促し、関東農村の経済・文化に大きな影響を与えた。
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