江戸時代には庶民の購買力が高まり、さまざまな商品が出回るようになり、それにともない商業宣伝の手段も発達した。
宣伝に配る一枚刷を<引札(ひきふだ)>と呼んだ。引札にはその店の手作りのものから、当代一流の戯作者(げさくしゃ)が広告文を書いたものまである。山東京伝(さんとうきょうでん)は紅問屋(べにといや)の玉屋、柳亭種彦(りゅうていたねひこ)は浅草海苔(のり)店の引札をつくっている。また山東京伝や式亭三馬(しきていさんば)は、自分の戯作本のなかに載せている。引札が配る広告であるのに対し、今日のポスターのように貼る広告を<絵ビラ>といい、湯屋(ゆや)や髪結床(かみゆいどこ)に貼られた。包装紙にも商標や屋号だけでなく広告文を載せたり、薬ならば効能書を記したりしたものがある。歌舞伎の人気役者が舞台上で商品の口上(こうじょう)を述べたこともあった。
商業宣伝の方法としては、ほかに看板・暖簾(のれん)・印半纏(しるしはんてん)や、店名入りの貸傘(かしかさ)・提灯(ちょうちん)・大風呂敷(ふろしき)・配り手拭(てぬぐい)などがあげられる。また錦絵に店舗を描かせたり、番付(ばんづけ)に店名を記載したりするのも一種の宣伝といえる。
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